校内研究

今年度の研究主題

  「生き生きと学び、確かな学力を身につける児童の育成」

     〜効果的な言語活動を取り入れた学習活動を通して〜

研究主題の設定理由  

(1)学校教育目標の具現化から

本校では,「主体性,創造性に富み,心豊かで,心身ともにたくましい児童の育成」を教育目標に掲げ,目指す児童像として,「知的好奇心にあふれる子ども」「自分を表現できる子ども」を設定している。これらは,本年度の指導重点項目の「確かな学力の育成」のためにある,「基礎的・基本的な知識及び技能の習得・定着,それらの活用,主体性を引き出す指導の工夫,論理的思考力を高める指導法,指導力を高める校内研究の充実」などがなされたときに具現化されるものと考えている。

学習指導要領では,国語科はもとより,国語科以外の各教科等の授業においても言語活動を充実させることを求めている。児童に「生きる力」をはぐくむことを目指し,確かな学力を形成する際に,子どもの言語活動を重視していくことが謳われている。このことは,言語活動を単に国語科だけでなく,全教育活動を通して,すなわち各教科等の学習活動において言語活動を充実させることが求められている。

 各教科等の指導において,言語活動を図ることにより,言語に対する関心や理解,能力を身につけることによって,子どもの思考力,判断力,表現力などの能力を育成することを目指す。こうした授業実践を繰り返すことによって,目指す児童像の具現化,ひいては学校教育目標の具現化がなされるものと考える。


(2)昨年度までの研究から

本校では,平成19年度から3年間山梨県教育委員会の「確かな学力ステップアップ事業」の実践検証校の指定を受けていた。「確かな学力ステップアップ事業」は,「基礎学力向上やまなしプラン(H14H16)」「学びの意欲向上推進事業(H17H18)」を継承するものであり,「全国学力・学習状況調査を始めとする客観的なデータに基づいて児童生徒の学力や学習の状況を把握し,その改善に向けての具体的な対策を通して,すべての児童生徒の確かな学力の定着と向上を図ること」を目的としていた。

その研究の内容・方法は次の通りである。@自校の全国学力・学習状況調査結果を分析して傾向及び課題を把握し, 検証改善委員会作成の『結果改善のための手引き』等を参考に,「授業改善プラン」を策定する。A「授業改善プラン」に基づいた授業実践を行い,プランの効果を検証する。B検証を基にプランに検討を加え,修正すべきは修正した上で,授業実践を行う。C「AB」を繰り返し,検証改善サイクルを確立する。つまり,「学力向上を目的としたPDCAサイクルの導入」という研究手法である。19年度・20年度・21年度ともに,「全国学力・学習状況調査」のデータ受け取り後,直ちに結果を分析し,本校の傾向(成果及び課題)を把握して,「授業改善プラン」を作成した。これらのプランを,随時,授業で実践し,その有用性を検証して改善点を探りつつ,検証改善サイクルを確立してきた。そして,平成21年6月26日に公開研究発表会を開催,研究の成果を発表し,研究指定校の役目を果たした。

 平成22年度は,「全国学力・学習状況調査」が悉皆ではなく抽出調査となり,本校は「全国学力・学習状況調査」を受けなかった。そこで,北杜市学力到達度検査(CDT)の結果を分析し,「授業改善プラン」を作成し,研究を進めたが,市の学力テストの結果を分析し「授業改善プラン」を作成することには無理があることがわかってきた。

 平成23年度からは国語科に絞り,三年間の実践を積んできた。今までの研究を継続・発展させ,効果的な言語活動を取り入れた授業実践を中心に研究を進めた。学力テスト等から「授業改善プラン」を作成することに固執せず,学力テストやアンケート・授業観察やスモールテストなど多面的に児童の実態を把握するとともに,それらを基に,より効果的な言語活動を取り入れた授業を求めて研究することが必要であることがわかってきた。

基礎的・基本的な知識・技能を活用し,お互いの考えを交流する「学び合いの場」をとおして,自分の考えを見つめ直し,さらに深めたり広げたりする授業を実践していくことが,児童の論理的思考力を高めることにつながってきた。また,児童一人ひとりの目標やねらいの達成状況を見取るための評価についても研究を継続してきた。

 国語科において自分の考えを文章に書き表したり,友達に伝えたりすることによって,言語能力の向上を図る授業の創造を図ってきた。そうした授業を意識して仕組んでいくことで,書くことへの抵抗がなくなってきた児童や,自分の考えを人に伝えることで思考が深まっていく姿を目の当たりにすることができたことは大きな成果であった。同時に,そうした力を他教科においても培っていくことの必要性を感じてきた。

 そこで,本年度は,記録,要約,説明,討論など各教科の特性に基づいた言語活動の充実を図るとともに,基礎的・基本的な知識・技能を活用することで思考力・判断力・表現力を育んでいくことをめざす。具体的には,国語科に限らず,各教科においてより効果的な言語活動を取り入れた授業を創造していく研究に取り組んでいきたい。

 また,今年度はNIE実践指定校に内定している。新聞活用により言語力向上への期待が大きい。その理論,実践例を学ぶことによって,各自の実践に取り入れていくこととする。

(3)児童の実態から

本校児童は総じて素直であり,授業や宿題に地道に取り組む姿勢が身についている。また各種学力調査の結果から,ほぼ全国・県平均の学力を有しているといえる。しかし一方,一定時間,集中して話を聞いたり学習を進めたりすることのできない子どもがみられ,「がまんしてやりぬく」「集中して取り組む」態度の育成は喫緊の課題といえる。また,自分の考えや感想を発表することが苦手であったり,友だちと考えを伝え合うことに消極的であったりする子どもが多いのも現状である。

確かな学力を身につけるためには,これら学習に向かう態度についての課題解決は不可欠である。そのために,学習意欲を促す日常の授業での意図的な働きかけや,自分の意見や考えをどうしても言いたくなるような学び合いの場面を取り入れた授業実践を積み重ねていくことが必要であろう。

本校児童に身につけさせたい力は何かという課題を常に意識し,教職員が意見交換しながら,「児童に対峙した研究・実践」を進めていきたい。

(4)今日的課題から

新指導要領実施四年目を迎え,学校現場でも一年間の実践をとおして全体像が見えてきた。今年度は,昨年度の実践を基に,それぞれの学校の特色を生かして工夫・改善をおこない,それぞれのスタイルを確立していくことになると思われる。

学習指導要領が求める生きる力とは,「確かな学力」「豊かな心」「健やかな体」の育成によってはぐくまれるものである。その中でも,「確かな学力」を育成するために,創意工夫を生かした特色ある教育活動を展開する中で,基礎的・基本的な知識及び技能を確実に習得させ,これらを活用して課題を解決するために必要な思考力,判断力,表現力等,論理的思考力をはぐくむことが求められている。その際,言語活動を充実するように配慮しなければならない。

 また,平成20年の中央教育審議会答申においても,授業において,思考力,判断力,表現力などの能力を育てるために,言語活動を充実させていくことは,次の視点から必要であることがあげられている。

 @体験から感じ取ったことを表現する

 A事実を正確に理解し伝達する

 B概念・法則・意図などを解釈し,説明したり活用したりする

 C情報を分析・評価し,論述する

 D課題について,構想を立て実践し,評価・改善する

 E互いの考えを伝え合い,自らの考えや集団の考えを発展させる

言語活動は,各教科等で求められている固有の目標や内容を身につけさせるための手段であり,活動である。各教科の授業において,言語活動を取り入れ充実させることや,言語に関するさまざまな能力を育てていくことは,子どもたちに学力を構成している重要な要素となる,思考力,判断力,表現力などの能力を育むためである。

新学習指導要領が唱える生きる力をはぐくむことは今日的な課題であり,そのためには,児童の言語活動を充実させ,「確かな学力」を育成していかなければならない。いわゆる知識基盤社会といわれる変動の激しい現代社会をたくましく生きていくために生きる力は必要不可欠な教育課題である。児童の「生きる力」をはぐくむためにも本主題を設定した。


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